配信日当日にいただいた講師へのご質問に対する回答
このたびは、プラクティカル看護セミナーをご視聴いただきありがとうございます。
2022年1月16日の生配信日当日、時間切れでお答えいただけなかった下記のご質問
- 交互脈は脈拍触知でも変化がありますか?
- 異化期は乏尿になる時期に、尿量が維持できる血圧をどうやってその患者にとって最適な血圧と判断したらよいでしょうか?
これらにつきまして、講師より回答がございましたので、以下にお示しします。
交互脈は脈拍触知でも変化がありますか?
回 答
的確なご質問を誠にありがとうございます。交互脈は、脈拍の触知で早期発見が可能です。
病棟では動脈圧波形がモニタリングされませんので、とくに重症心不全患者の脈拍触知は「必須」ということになります。
ただし、収縮期血圧の「程度」により「触知の結果」は異なります。
理論上、脈拍の触知は橈骨動脈で可能な場合、推定収縮期血圧は80mmHg以上です。
そのため、収縮期血圧が80mmHg以上の交互脈であれば「大脈・小脈(テキストp.17)」として触れます。
その際、交互脈は「不整脈」ではありませんので、「結滞」ではなく「整脈」であることがポイントです。
一方、収縮期血圧が80mmHg以下である場合、「小脈」は触れず「大脈」のみ触れる可能性があります。
つまり、実際の心拍数が144bpmでも、一方の収縮期血圧が80mmHg以下の交互脈であれば、半分の72bpmで触知されるということです。
上記の脈拍の触知で「あれ?何だかおかしいな?」「不整脈、あったかな?」「レート、こんなに少なかったかな?」と感じたら、即時に「心拍数の聴診」も実施します(発作性心房細動の脈拍・心拍同時測定のイメージです)。
あるいは、セントラルモニタが装着されていれば、心拍数やリズムはそちらで確認してもよろしいでしょう。
遭遇頻度は低いですが、重症心不全の見逃してはいけない低灌流所見(Nohria分類)ですので、ぜひ患者の声として気づいてほしいと思います。
異化期は乏尿になる時期に、尿量が維持できる血圧をどうやってその患者にとって最適な血圧と判断したらよいでしょうか?
回 答
Ⅰ(心臓血管外科周術期に必要な基礎知識を押さえる)とⅢ(術後合併症の管理・看護が明日から変わる)を統合しながら聴講してくださり、ご質問を誠にありがとうございます。
確かに、異化相(傷害期)の乏尿と「尿量が維持できる最適な血圧」の判断は、しばしば課題になります。
急性腎障害に陥らないためには、乏尿期であっても0.5-1mL/kg/ hの確保は必要です。
そのため、それが維持できる血圧が「最適」ということになります。
ただし、いずれの時期においてもアセスメントの根拠は「心機能を左右する4つの因子」「Starlling曲線」「Nohria分類」などです。
つまり、次に「最適な血圧を維持」するためには、4つの因子である「心拍数」「前負荷」「後負荷」「心収縮力」を統合的に最適化することが大変重要です。
一般的に、この時期は侵襲が大きいほど「前負荷」が不足していることが多いため、過負荷にならない程度に「Starlling曲線」を上げてあげると、必然的に「1回拍出量(≒血圧)」も改善されるということになります。
循環動態アセスメントの根拠としてお示しした「心機能を左右する4つの因子」「Starlling曲線」「Nohria分類」などに基づき(p.18-19)、日々変動する患者の個別性に見合った「最適」を「チームで探究」してほしいと思います。